ウイスキーは時間が造るものだと言うウイスキーファンは大勢います。ウイスキー特有の豊潤な香りや味わいのそのほとんどは、樽の中で熟成される長い時間をかけて、徐々に液体に浸透していくものだからです。
同じ原料、製法で作った原酒であったとしても、そこから出来上がるウイスキーは樽ごとに千差万別です。樽の材質や形状、前歴(以前にどんなお酒が詰められていたか)、熟成年数、そして樽が保管されている環境によって、原酒の味わいは実に多彩に変化していくのです。
そんな樽の与える影響についてよく知っているウイスキーマニアであれば、誰もが一度は抱く夢。それが、自分だけの樽を所有してみたい。ということではないでしょうか。
そんな希望を叶えてくれる、まさに夢のような企画がかつて行われていました。
それが、「オーナーズカスク」です。
サントリーは言わずと知れた国内最大のウイスキーメーカーです。日本初のウイスキー蒸留所である山崎蒸留所や、森深き場所に位置し自然の恵み溢れる白州蒸留所といった巨大蒸留施設を有し、膨大で多種多様な原酒貯蔵量を誇るサントリーだからこそ実現できたこの企画は、国内外を問わず大勢のウイスキーファンに衝撃を与えました。
「サントリー オーナーズカスク」とは、ウイスキーを樽ごと販売するというもので、世界でただひとつの自分だけの原酒を樽ごと所有できる、日本初の試みでもあります。ウイスキー界ではこれまでも、ボトラーズと呼ばれるメーカーたちが、樽ごと買い取った原酒を瓶詰めして販売するということを行っていましたが、個人で樽を購入することができるというのは世界的に見ても実に珍しい試みと言えるでしょう。
また、サントリーが誇る多数の樽の中から、それぞれに異なる味わいの好きなものを選べるという点も、他には類をみません。
「オーナーズカスク」のために用意されたのは、サントリーが所有する100万樽以上の中から職人が厳選した103樽。
樽材はホワイトオークやスパニッシュオーク、日本古来種であるミズナラ製など数種類。熟成年数も10年から25年までが用意されていました。そして樽の形状もパンチョンやホッグスヘッドと呼ばれるような様々な形状のものまで、実に様々です。
それらの組み合わせによって、用意された103樽全てがそれぞれに個性的な、異なる味わいをもつというから驚きですよね。
金額も樽ごとに個別に設定されており、最も安価で購入できたものでも1樽50万円から。最も高価なものになると、なんとその金額は3000万円だったといいます!
一般人からすると、なかなか気軽には手が出せない世界の話だったにもかかわらず、オーナーズカスクには発表と同時に申し込みが殺到したと言います。
近年のジャパニーズウイスキーブームを受け、さらに2010年には一時終売となったことで、オーナーズカスクシリーズはもう手に入らないボトルとしてその希少性がさらに高騰を続けています。
山崎蒸留所は日本初のモルトウイスキー蒸留所として、寿屋(現在のサントリー)の創業者である鳥井信治郎氏によって1923年に設立されました。
そこには、これまで海外が主流だった本格的なウイスキー造りを、日本にも根付かせたいという強い想いがあったと言われています。
古くから名水の地として知られている大阪・山崎は、宇治川など3つの川が合流する立地のために霧が立ち込めており、本場スコットランドに近い環境だと言われているこの地を日本初の蒸留所として選んだそうです。
今や名実ともに日本を代表する蒸留所となった山崎蒸留所では、樽材や形状、原料など様々な条件によって実に多種多様な原酒が製造されています。
公式発表ではサントリーが保管している原酒の数は、その他の蒸留所も合わせると、なんと100万樽以上ともいわれています。
こうした様々な原酒は、一つ一つの味わいが微妙に違っています。
ブレンダーと呼ばれる職人たちの卓越した感覚によって、これらの原酒を繊細に掛け合わせることによって、山崎や白州、響といった世界に誇れるジャパニーズウイスキーたちは造られているのです。
サントリー オーナーズカスクは、こうした原酒を掛け合わせず、樽本来の個性をそのまま味わえるとして、ウイスキーファンにとってはまさに夢のような試みでした。
2004年に販売を開始したそれぞれの樽は、非常に高額での販売だったにもかかわらず大好評を博し、2010年には一時休売となってしまっています。
山崎蒸留所の初代所長となった人物が竹鶴政孝氏だということは有名ですよね。
竹鶴政孝氏は一大ブームにもなったNHKの連続ドラマ「マッサン」の主人公のモデルになった人物として知られています。
竹鶴氏は日本のウイスキーを世界で愛されるものにしたいという強い想いをもち本場スコットランドに渡ったほどの人物です。
彼のこうした尽力がなければ、現在のジャパニーズウイスキーのここまでの発展はなかったでしょう。
山崎蒸留所の敷地内には「山崎ウイスキー館」という施設が併設されており、こうしたジャパニーズウイスキー発展の歴史を知ることができるだけでなく、蒸留に使われるポットスチルや発酵槽などを見ることも出来ます。
また、館内にはウイスキーを試飲できる場所もあり、通常では手に入らないお酒を飲むこともできるようになっているそうです。そのためこの地は、ウイスキー好きにはたまらない、ある種の聖地となっているのです。
サントリーの初代創業者である鳥井信治郎氏も、蒸留所の場所を検討していた際に、地元に愛され気軽に訪れることが出来る工場にしたいとの願いから、京都や大阪からほど近いこの山崎という地に蒸留所を設立したのだと言われています。
現在でも山崎蒸留所はジャパニーズウイスキーを愛する人々で日々にぎわいをみせています。その勢いは決して国内だけでなく、遠く海外からこの地を訪れるひとも多いのだそうですよ。
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